病気・ケガ

犬の脱臼について 治し方や治療方法、かかる費用

いつ、どこで発症するか分らない、ワンちゃんやネコちゃんの脱臼。

急に腰が抜けたように動かなくなったり、片脚を上げて歩き始めたりと、脱臼は普段の生活の中でも起きることがあります。
「つい先ほどまで元気に走り回っていたのに」と、飼い主さんは突然の異変にとまどってしまうかもしれません。また軽度であれば自然と元に戻ることもあるので、気が付かないまま癖になってしまうこともあります。

脱臼すると、片脚をカバーするためにもう一方の脚に負担がかかります。そのまま放っておくと生活に支障が出始め、手術が必要になったり、完治が難しいケースに発展してしまうことがあります。

脱臼をしないようにするには、普段からどのような点に注意が必要なのでしょうか。また発症した場合はどのようにケアをすればいいのでしょう。

こちらではワンちゃんとネコちゃんを対象に、脱臼の予防から治療方法・治療費についてまとめてみました。

脱臼は身体が不自由になるだけでなく、運動不足やストレスの原因にもなります。大切なペットがそのような状況になってもすぐにケアできるように、情報収集にお役立てくださいね。

犬の脱臼について

・脱臼とは
脱臼は骨の関節が本来あるべき位置からずれてしまうことを指します。骨折と同じように事故などの外傷によって起こることが多いのですが、中には股関節や膝関節の遺伝的な要因から、関節の形成が不完全のために起こります。

脱臼の症状は部位や程度によって様々です。

一般的には腫れや痛みなどの症状をともなったり、片脚を引きずるなどの明らかな運動機能の変化が多く見られます。症状が軽い場合や部位によってはまったく痛がる様子がなく、曲げ伸ばしによって自然と元の位置に戻ることがあります。

ワンちゃんに多い脱臼は、股関節と膝関節の脱臼です。他には足根関節、手根関節、肩関節、仙腸関節、顎関節なども発症します。

股関節脱臼は事故などの大きな衝撃で起きることが多い脱臼ですが、大型犬に多く見られる股関節形成不全や、小型犬に見られやすいレッグ・ペルテス病なども原因の1つにあげられます。

足根関節脱臼は後ろ脚、手根関節脱臼は前脚に生じる脱臼です。踏まれたり、引っかけたりした際に起こりやすく、指の骨折やじん帯を損傷していることもあります。

仙腸関節脱臼は腰に大きな力が加わることで起こる脱臼です。

肩関節は肩への圧力の他に、小型犬では遺伝も原因の1つになります。脇に手を入れて抱きかかえただけで、外れてしまうことがあります。

顎関節脱臼は上顎と下顎がずれたり外れることを指します。ケースとしてはあまり多くはないようです。

ワンちゃんの脱臼の中で特に多いのは、膝関節に生じる「膝蓋骨脱臼」といわれています。

関節というよりも膝のおさらが内側や外側にずれてしまうことが多く、膝のおさら(膝蓋骨)が、内側にずれる内方脱臼と外側にずれる外方脱臼があります。内方脱臼は小型犬に多く見られ、外方脱臼は大型犬の方がやや発生率が高いといわれています。

生まれつき膝関節の筋肉や骨などに異常がある遺伝や、事故などの外傷から生じてしまうことが原因と考えられます。

膝蓋骨脱臼には1から4までのグレードがあり、それぞれの段階によって症状も様々です。はっきりと分けられないこともあり、あくまで目安とされています。

グレード1:おさらにゆるみがある状態です。脚をまっすぐに伸ばした状態で膝蓋骨を押すと脱臼しますが、元に戻ります。この時点では時々脚をあげる程度で飼い主さんも気が付かないことがあります。予防に徹するなどして様子をみることが多いです。

グレード2:日常的には外れないが、外そうとするとすぐに外れる状態です。膝を曲げたり手で押すと脱臼しますが、元に戻すことが可能です。

グレード3:外れる頻度が高く、戻すこともできる状態です。歩行が困難になります。

グレード4:外れる頻度が高く、戻すことができない状態です。変形が見られ、前脚だけで這うように歩行します。

グレード2以降は基本的に手術が必要といわれています。以前はグレード2でも体重が軽いワンちゃんは歩けるために、様子をみることが多くありました。しかし数年で他の部位を痛めることもあることが分かり、高齢になると寝たきりになってしまう可能性もあるので、現在では症状が進行する前に手術を行う傾向があります。

膝蓋骨脱臼が悪化すると、特に「前十字靱帯」に損傷を抱えることが多いようです。

膝には腿と脛をつなぐ太い靱帯が複数あり、その1つである十字靱帯が膝蓋骨のずれによって大きな負担がかかり、切れてしまうことがあります。後ろ脚をかばいながら歩くため、前脚に大きな負担がかかります。膝蓋骨脱臼により、このような別の損傷を抱えてしまうことになりかねません。そのため、早期に手術をする獣医師が増えています。

脱臼の発症は生後数週間の子供でもみられることがあります。獣医師の間でも様々な見解がなされていて、子供のうちはまだ発育途中のため、「成長過程で筋肉がつけば良くなることもある」という獣医師もいます。関節のはまりが浅いために生じることから、屈伸運動などのリハビリやサプリメントで様子を見る場合があります。

手術をする際も、症状や獣医師によって様々な方法で行われます。

軟骨を温存しつつ溝をつくる手術や、頸骨の一部を切断し緩める手術などがあります。脱臼は癖になることが多いため、手術をしても再発することがあります。ワンちゃんの負担を考え、飼い主さんは手術後の生活もしっかり注意しなければなりません。

遺伝の場合はその予防が難しいといわれています。小型犬を飼う場合は、飼い始めた段階ですべりやすい床などにカーペットを敷くことをおすすめします。衝撃をおさえることで、負担を軽減することができるようです。

また、元気なうちに触診やレントゲンを撮るなどして、関節の状態を診てもらうことをおすすめします。
飼い主さんの中には予防のために、子供のうちからサプリメントを飲ませている方もいらっしゃいます。骨格が成長段階の若いうちは症状の進行も早いため、このような予防が大切になります。

普段の運動方法についても知識が必要です。体重が重いと脚に負担がかかり脱臼しやすくなりますが、過度な運動によって悪化してしまうこともあります。ご自宅のワンちゃんに合った運動方法はどのようなものがあるのか、獣医師からアドバイスを受けると良いでしょう。

小型犬の中で膝蓋骨脱臼になりやすい犬種は、チワワ・パピヨン・トイプードル・ポメラニアン・ヨーキーなどで、約80%のワンちゃんがこのような症状に悩まされるといわれています。遺伝の場合は同じような症状が出る可能性が高いので、子供は産まない方が良いでしょう。

なおし方、治療方法、かかる費用

時間が経つほど脚の変形は悪化する傾向にあるため、できるだけ早く関節を正常な位置に戻します。全身麻酔をし、皮膚の上から圧力を加えたり、低出力のレーザー治療を施す方法があります。
レーザー治療は、光が体内を通過する際に、元の状態へと働きかける作用があるといわれ、このレーザー治療によって関節が外れづらくなることがあります。

症状が軽い段階で手術をしないと、手術でも回復できないこともあるため、一般的には外科手術を行うといわれています。

治療方法やグレードが獣医師によって異なる可能性があるため、診察を受ける際は脱臼に詳しい専門医を探すことをおすすめします。治療費は症状の程度や動物病院によって異なり、10万円未満でおさまることもあれば、30万円以上になることもあります。手術の後に入院や通院をする場合は、その日数分の治療費を用意しておく必要があるでしょう。

治療後は症状によっては薬で炎症をおさえ、患部を固定して安静を保ちます。

「安静にするように」と獣医さんの指示があっても、人間のようにずっと寝かしつけることは難しく、ケージなどで行動に制限をかけてもストレスでさらに激しく動きまわることがあり、困り果ててしまう飼い主さんも多いようです。

普段は可愛らしいワンちゃんも、ストレスによって噛みついたり暴れるなどの問題行動に発展することがあります。

ケージの中で安静にさせる場合は、ケージの頭上にクッションなどのマットになるものを設置すると、ワンちゃんが飛び跳ねた時などでケガの防止に役に立ちます。ケージに体当たりをするなどして身体を傷つけてしまう際は、飼い主さんが抱っこをしてあげることで落ち着くこともあります。

また獣医師に相談のうえ、滑らない環境を作ることである程度自由に過ごせることもあります。サークルを用意し、その中にマットレスなどを敷きつめ行動範囲を広げている飼い主さんもいます。

中には、ゆっくりとした速度ならお散歩をしてもいいと許可をもらえることもありますので、獣医師との相談が大切になってきます。

ワンちゃんの症状や精神的な負担を見つつ、できるだけ快適に過ごせるといいですね。

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